8番出口|映画感想(ネタバレあり)

無人の地下通路

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予告からただならぬ不穏さが漂っていた映画『8番出口』。インディーゲームクリエイターのKOTAKE CREATE氏がたったひとりで制作したというすごいゲーム…。
監督は川村元気さん。そして主演は二宮和也さん。発表当初から大きな注目を集めていた作品です。
私は原作となったゲームを実際にプレイしたことはないのですが、ゲーム実況を覗いたことがありました。無限に続くような地下通路で、異変を見つけては戻ることを繰り返す――あの独特の不気味さ。
映画版でもその再現度が本当にすごくて、映像化によって不気味さがより際立っていました。

ここからはネタバレを含みますので、ご注意ください。

目次

ストーリー

満員電車に揺られる主人公。泣き止まない赤ん坊をあやす母親に、ついにサラリーマンが声を荒げます。しかし主人公は助けることもせず、イヤホンを耳に差し込み現実から目をそらす。そこに別れた彼女から電話が入り、妊娠している事実を告げられます。動揺しながら地下通路を進みますが、電波が途切れ、会話は途切れてしまうのです。

気づけば主人公はループし続ける不思議な空間に閉じ込められていました。歩いても景色は変わらない。無表情で通り過ぎる人々、繰り返し現れる同じポスター…。途方に暮れる中、壁に奇妙な案内を見つけます。

  • 異変を見逃さないこと
  • 異変を見つけたら、すぐに引き返すこと
  • 異変が見つからなかったら、引き返さないこと
  • 8番出口から外へ出ること

小説版ではさらに8番出口を詳しく↓

迷う男(二宮和也)

人物名での紹介は無く、迷う男と紹介されます。この主人公…物語の冒頭から見てみぬふりをした罪悪感を抱えたり、別れた彼女から妊娠の事実を告げられて動揺しています。そのまま不気味な地下通路のループに閉じ込められてしまします。
正しく進めば案内板の数字が増え、間違えれば0番出口…振り出しに戻る。
異変を確認するために携帯で写真を撮っても、見返すと全て黄色一色。 仕方なく自分の記憶を頼りに異変探しを始めます。 怪異が迫ったり、残念な見落としで失敗に終わったり…。
彼女からの着信が入り会話ができたことで、希望を持った主人公でしたが…。
これは現実?怪異??

歩く男(河内大和)

場面が変わり、戸惑いながら少年の手を引き地下通路を進むおじさん。歩く男。なんとこのおじさん最初から怪異だったわけではなく閉じ込められた人だった。
少年はしゃべることはありませんが、地下通路の怪異をしっかり見つけていまいした。しかし、おじさんには伝わらず0番出口に戻ってドッタンバッタン!(気持ちは分かる…。)
歩き続ける女子高生といきなり意思疎通できるようになって、何の疑いもなく信じそうになったり、「本当に戻りたいの?」と尋ねられておびえたり。とにかく動揺しまくり。
順番をすっ飛ばして階段を見つけ、大喜びで進もうとしますが、少年が手を引っ張って拒否。出口だと信じて疑わないおじさんだけが階段を駆け上がっていってしまうのでした。 少年が通路を引き返すと、あのおじさんが無表情で向こうから歩いてきます。どれだけ引っ張ってもびくともしない。ただ同じ動きを繰り返すだけになっていました。

少年

やがて主人公は無口な少年と行動をともにします。異変を的確に見抜く少年に助けられながら進む中、ある女性が地下通路に現れます。動揺する少年を抱えて引き返す主人公。その後、母を求める少年の本音が語られます。
ここから出たら…、自分はどうすればいいのか分からないとこぼす主人公に、お守りだと少年が貝殻を渡します。

ようやくゴールまであと少しという所で、濁流に巻き込まれてしまう2人。 場面が変わり、主人公は海岸で彼女と姿のぼやけた息子といた。自分を呼ぶ息子に、彼女が「どうするの?呼ばれているよ?」とまた問いかける。この世界では自分は父親になっていた。悩み続ける主人公に彼女は大丈夫と言葉を送ります。

少年を助けて濁流に流されてしまった主人公。流れが収まり、たくさんのガラクタが散乱する通路で目が覚めた少年は、最後の通路へ向かって進んでいきます。
その後、主人公も通路へとやってきました。慎重に進み、階段を下りると、人とすれ違い周りの喧騒が聞こえてくる…。 彼女に電話をかけ、会いに行くと伝えて電車に乗り込みます。 電車内ではサラリーマンが母親に怒鳴る場面に遭遇。全く同じシチュエーション…。決意した顔で動き出す主人公の姿で物語が終わります。

感想

「ゲーム的なループ構造をそのまま映画にしたら単調になるのでは?」…と少し心配していましたが、まったくそんなことはありませんでした。
異変を探しながら進む緊張感はまるで観客も一緒に“プレイ”しているかのようで、振り出しに戻る絶望感や焦燥感が伝わってきます。
本当にその選択でいいのかと、疑心暗鬼にもなりそうです。

誰にでも経験のあることですが、どの選択をするのか…。進むのか?引き返すのか?主人公の場合、別れた彼女の妊娠について、どんな答えを出すのか。
葛藤、悩み、決意があります。ただの間違い探し映画ではなく、主人公の内面や感情が強く描かれていて、恐怖の中に深みを感じさせてくれます。
「自分ならどうするだろう」と考えさせられる余韻が残りました。
「父親になることへの葛藤」「見て見ぬふりをしてきた後悔」…ずっと悩んで答えが出せない心理状態が、あの地下通路に反映されて出られない主人公。
このループする地下通路は、人の心理的恐怖をついてきたり、騙してきたりしました。
いろんな異変が起こったり、逆に何もなくて進むことも怖い。不気味…と感じます。登場人物についても詳しく語られないので、見る人によっていろんな解釈の仕方もできるのかなと思いました。

二宮さんの演技もすごく追い詰められた様子、絶望感などすごかったです。決断できない。どうする?また振り出し!
喘息の症状があり、派遣で働いていることからも、自分が父親になるという未来に不安はあったのかもしれない。
ある女…別れた彼女(小松菜奈)の登場シーンは限られていましたが、電話で…異変で…ミステリアスな描かれ方ですごく気になる人物でした。
少年も物語に登場することでさらに謎が増えていろんな考え方ができたのも楽しかったです。

無表情で歩き続けるおじさん、河内大和さんですが…。あの人も被害者側だったんですね。まさかおじさん視点でも話が進むとは思っていなかったので驚いたし、おもしろかった。焦っていても少年を気遣えるおじさんを応援したくなりましたが、肝心なところを見落として残念な結末になっていました。

頑張って通路を進み、一喜一憂する姿が本当に人間らしくて、最初の無表情を見慣れてからのこ真相なので、「うわ~~…」と思いました。希望と絶望の対比がすごかった。
少年の行動を気にかけたり、もっと冷静になっていたらな…と思わずにはいられない。

ちなみに小説ではこのおじさんの奮闘がもっと語られています。映画では出なかった異変もこのおじさんが体験していたそうな…(汗)。ただ、父親として問題を抱えていることも判明します。
小説版では、らさらに登場人物の心理描写が語られているのでお勧めです!

小説版ではさらに8番出口を詳しく↓

はっきりと語られてはいないが、迷子の少年はおそらく主人公(迷う男)の未来の息子らしいという描写も。しかも話す中で父親に会ったことが無いということから、妊娠をした彼女が一人で息子を育てているという未来の姿だろうと予想される。
ある女が異変として出てきた時、少年は母親と認識していて、主人公は彼女に見えていた。もしかしたら2人とも別の人物が見えていたという可能性もあるが、黒猫だったり貝殻のお守りについても「やっぱりそうなのかな?」という部分がありました。

ただの脱出映画的なイメージで観に行きましたが、選択を迫られた時にどうするか?赤ちゃんの泣き声が心に不安感をあおるような重たい気分にもさせられ、正直に言うと最初から最後までズーンと重たい気分だったかも。それでも、ストーリーも仕掛けも見ごたえがあって楽しめました。

ホラーやサスペンスが好きな方はもちろん、心理劇が好きな方にもおすすめできる一本です。

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